仙腸関節の重要性は多方面で述べられておりますので基本的なところをここで述べるのではなく、仙腸関節と連動の線と連動の質というように少し違った視点で考えていきたいと思います。
仙腸関節で述べられる時についてまわるのは「仙腸関節は動くのか?」という事です。
動く、動かない、という論争は形と動きだけの議論に終始しているので私はこの視点をよしとしていません。
なぜかと言えば、仙腸関節を考える時には以下の3つが最低限、特に必要な考え方だと思っているからです。
1、形
2、動き
3、力
この3つの視点で言えば、1と2は自分で調べればわかりますので調べてみてください。
問題は3の“力”です。
仙腸関節は、その関節面に当たり前ですが力が生じます。これは例えば、仙腸関節が動くとしても、動かないとしても、力が掛かることだけは否定できません。
例えば、立位においては、仙腸関節の関節面に自重による重みがかかります。これが力が掛かります。足で踏ん張ったときも、仙腸関節の関節面に力が掛かります。
私にとっては、仙腸関節が動くか動かないかという事は正直どうでもいい話で、問題はそこに掛かってくる“力”であると考えています。
仙腸関節にうまく力が掛からない、身体動作の連動という視点で考えた時には力がスムーズに仙腸関節を通過しているか?ということを重視しています。
形や動きが整っていないと力が掛からない・スムーズに通過しないということもありますが、仙腸関節に生じる力ありきで考えると色々な事は腑に落ちます。
腰痛や膝関節痛などの筋骨格系の問題の多くは、この仙腸関節に生じる力と、力の通りが低下している事は臨床上確認できます。
結果として、関節面への力、通りが低下すると、関節が不安定となり、関係筋に過剰緊張がかかると考えています。
また、関係筋の過剰緊張が仙腸関節への力、通りを低下させるということもありますが、ほぼ同時に起きているというのが自然です。
仙腸関節の調整というのは、形、つまり位置の調整だけでは不十分であり、動きだけでも不十分であり、力の伝わりという視点を外さない事が失敗しないコツであると考えます。
仙腸関節は、“力”という視点で調整していくことによってより強固に調整され、うまく調整されると関係筋群の過剰緊張がなくなっていきます。
さらに連動の線、連動の質という視点から仙腸関節と力を考えてみます。
連動の線とは、身体内部に生じる力の方向性、通り道ということになります。連動の質とは、その力がどれくらい伝わっているのか?という線の強さということになります。
連動というと連動の線だけをイメージされる方も多いですが、それだけでは不十分です。
また、連動という存在を動き方という捉え方をするのではなく、身体内部に生じる力の方向性という視点を加えることが重要です。
動きというのは身体内部に生じる力の方向性の固定と移動によって生じた結果だからです。
身体内部に生じる力が十分に関節に作用することができると、その関節には中心ができたということになります。
中心とは、物理的な真ん中でも、関節可動域が広がるというだけでもありません。力の通りまで実現できて初めて関節の中心ができると言うことができます。
言い方を変えると、力の通りが最も機能する形と関節可動域が「中心ができている」という考えになります。結果的には、それはシンメトリーではないことが往々にしてあります。
形も大事、動きも大事、力も大事、という話でした。