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コラム

2015.05.14

“肚”を考える

肚という言葉は色々と想像を掻き立てられる言葉です。そんな想像の一つとして、ある視点から肚という存在に迫ってみたいと考えています。こういう観方をしても面白いのでは?というところですので、そんな感じで気楽にお読みください。

*ここで言う肚とは、武道的背景というよりも整体的背景に重きをおいて発想しています。いきつくところは同じかもしれませんが、その辺を考慮していただくと混乱が生じなく済みます。

ハラという音には、大きく分けて2つの言葉とイメージがあります。

一つは腹(ハラ)。

そしてもう一つは肚(ハラ)です。

なぜこんなことを言うのかというと、ハラを使うという事が様々なところで言われています。

ハラを決める、ハラで動く、ハラから声を出す、ハラに落とす・・・・などなど。

患者さんやクライアントさん、プロの方でもしばしば、そんなハラという存在を、頭のイメージでも実際に使う場合にも腹だと思っている方が多いです。

つまり、お腹だと思っているということです。

これは私の持論ですが、ある意味において正解であり、ある意味において不正解でもあります。

「ハラは腹ではない。」

先に述べた色々なところで使う「ハラ」は腹ではなく肚です。

つまり、お腹に力を入れる事と、肚に力を入れる事は似て非なるものということです。

実際に多くのクライアントと接していると、肚に力を入れようとすると腹に力を入れる人が多いです。

ではこの2つ、何が違うのでしょうか?

実に簡単な事です。

人間を真上から眺めたとき、例えば下腹部胴体が楕円形だとします。

腹とは、その前面の事です。

肚とは、その中心部分の事です。もっと言えば人間という物体の機能的な中心とも言えますがそれは別の機会に。

実践的に言えば肚は、腹も腰も包括されている存在です。

つまり、肚はお腹ではないということです。

音が同じですので、多くの方が混同しやすいのがこの肚。

肚は前でも後ろでもない、中心であるということ。

これはその字からも読み解けます。

肚は肉付きに土、と書きます。

なぜこれでハラと読むのでしょうか?

諸説あるとは思いますが、わかりやすく言えば、

東洋思想の一つに五行思想というものがあります。

木・火・土・金・水、という構成要素がありますが、その中の土というのは中心という位置としての意味を持っています。(ちなみに木は東、火は南、金は西、水は北。)

また、土というのは位置的な中心という意味ばかりではなく、それ自体が変化するものであり、また色々なモノコトを変化させる機能としての中心要素とも解釈することができます。

位置的にも機能的にも中心という役割を担っているのが「土」という世界であり、誰がつけたかわかりませんが、肉付き、つまり人間に土をつけ、それを肚(ハラ)と呼ぶ事の意味は想像以上に大きいことがわかります。

位置としても中心あたりに存在し、機能としても全ての動きの中心となるところ。

つまり、中心は中心であり、肚はお腹(前面)ではないということです。

「ハラは前でも後ろでもなく中心である。」

たったこれだけの事なのですが、非常に勘違いされやすいところでもあります。

施術の時に疲れたり、手元が不安定になる施術家の多くは肚が使えていません。つまり、下腹部の中心から動けていません。

だから異様に腰が反ったり、逆に丸くなったり、疲れやすく、手技が安定しないわけですが、

では肚に意識を落とせばいいのか?

それだけでもありません。

肚というのは意識だけの世界ではなく、実際の身体技法の世界でもあります。「思っただけでは治らない」という理屈と似ていて、「意識だけでは落とせない・使えない」というのが本当のところです。

実際には肚がある程度使えるようになってくると、強い意識がなくとも、自然と肚に落ちた感覚や足底の安定感が得られるようになります。

意識と実際の身体の動きはリンクしていますので、それをマッチングさせることが大切です。

相変わらず脈絡のない記事でしたが、まとめると、

■ハラには、肚と腹があり、

■ハラを使うのハラは、腹ではなく肚であるということ。

■肚は前でも後ろでもなく、中心であるということ。

■肚は意識と実際の動きのリンクが重要であるということ。

呼吸・整体の丹田呼吸法勉強会でお伝えした一部をシェアさせていただきました。

お読みいただき、ありがとうございました。