呼吸と関節について。
大枠の基本で言えば、
吸気が増すと関節は開き、関節や靭帯の安定性は低下します。それを補う形で筋肉が作動しやすい状態になります。
呼気が増すと関節は閉じ、関節や靭帯の安定性は強くなりますが、呼気が過ぎると筋肉も収縮しやすくなります。
やや呼気になると関節はやや閉じ、関節や筋肉の安定性もほどよく強くなり、筋肉はほどよい弛緩がえられます。
これを動きに使ってみる場合、何に活かせるのか?
呼吸の力を使って動くということは、呼気と吸気それぞれの働きを活かしながら動くということです。
身体は伸ばせて縮められる、吸えて吐ける、関節で言えば開けて閉じれる、それが出来るということが大事であり、それが中心ができるということになります。
ですので、呼気と吸気をうまく活かしながら身体動作をおこなうメソッドは普遍的に有効なものです。
代表的なものが、ヨガやピラティス、または気功的なものもそれにあたります。
ただ、多くの方が見落としている点があります。
それは呼吸の基点という概念です。
呼吸の基点とはふだんの、日常の呼吸の中心点のことです。どこを基点にして吸って、吐いているのか?ということにもなります。
呼吸の基点が吸気優位で運動し続けると関節は不安定になり、関節はもちろん、筋肉を傷めやすくなります。
当然、そのまま運動し続けていると関節が不安定な状態で筋肉がつきますので実際には使えない筋肉が身につきやすくなります。
これは狙いがどこにあろうと同じです。
筋膜を狙おうと、関節を狙おうと、筋肉を狙おうと、つまり何を狙っても、どんなメソッドでも、呼吸の基点を吸気優位に設定した状態での身体作りは危険性が高くなります。
呼吸の基点の吸気優位にすると、呼吸の力で言えば開方向、膨張優位一辺倒を指します。
今の時期はラジオ体操の季節ですが、呼吸の基点を吸気優位でラジオ体操をするのと、呼気優位でラジオ体操をするのと、身体の動きや結果はまるで違うことが体感できます。
そこで重要なポイントは、その基点をやや呼気優位に設定しておくことになります。
やや呼気優位とは、身体内部の力としては軽度収縮方向であり、また陰圧となります。
呼吸の基点は、ふだんの、日常での呼吸の中心点ですので、身体全体の在りように大きな影響を与えるものです。
私のところにはヨガやピラティスにチャレンジしてはみたものの効果を感じられなかった方や逆に身体全体をおかしくしてしまった方もおります。
その理由は、メソッド自体に問題があるというよりも、呼吸の基点が吸気優位のままで動いてしまったことにあることが多いです。
つまり、あまりに吸気優位が強すぎる方には難易度が高過ぎるメソッドということが言えます。
まだその段階ではないのです。
酷い体調不良の方をコーチする場合は、その辺を注意深く観察してあげることが大切になり、その人のキャパ、つまり呼吸の基点が乱れないところからコーチする必要があります。
施術ではなく、養生法で体質改善をサポートしたい人は知っておく必要があるポイントです。
呼吸導引は有効ですが、呼吸の基点 という存在をすっぽかすと効果が半減するどころか逆効果になることがあると理解することも大切になります。