今回は第2回コラム「身体の膨張と収縮 その1」からの続編です。
前回コラムをお読みになるとわかりやすいと思います。
今回は、身体の膨張と収縮という働きを「動き」「関節」「連動」という視点から書きます。
それではよろしくお願いいたします。
膨張と収縮というのは動きの一つです。動きは大雑把にみれば2つに大別され、1つは前回コラムで述べたような自然に起こる膨張と収縮という動き、もう1つは自分自身が動くという文字通りの「動き」です。
膨張と収縮というリズムは、気温等の環境変化、身体状態に応じて柔軟に変化します、これも自然治癒力の一端かもしれません。その膨張と収縮というリズムを阻害するのは、現実的には後者の「動き」です。
[各関節でも膨張と収縮、そしてコーディネーション(連動)]
全体で起こっているということは、部分にも起こっているということ。
関節で考えてみます。
関節というのは、自分自身の意志で随意的に動かすことができます。屈曲・伸展などがそう。それとは別に不随意的に行われる開閉というリズムを持っています。これを身体全体の膨張と収縮リズムの延長線と捉えることができます。(随意的に開閉することもできます)
これは脊椎であろうと、肩甲上腕関節であろうと、中手指節間関節であろうと、程度の差はあれ、リズムを持っています。
この開閉リズムは関節運動や、その関節に関わる筋運動にも大きな影響を与えます。関節・筋に大きな影響を与えるということは必然的に神経・血管系にも影響があると考えるのが自然です。
その開閉というリズムは、連動性にも関連しています。
つまり、単一の関節にも開閉があるように、例えば指から頚椎にかけての複数関節が含まれているライン(線)の中でも開閉のコーディネーションがあります。このコーディネーションを連動と捉えることも出来ます。
どこかの開閉リズムがうまくいかないと、コーディネーションに歪み(滞り)が生じることになります。
もっと大きくみれば身体全体にも開閉というリズムと、開閉のコーディネーション(連動)があります。
[膨張と収縮というリズムとコーディネーション、と呼吸]
つまるところ身体は、膨張と収縮というリズムとコーディネーションを整え、結果的に身体全体の中心と各関節の中心がつくられれば調整(自然治癒力の発動)が成立すると考えることができます。(そのリズムとコーディネーションを維持していくための在り方が動きのコントロール、つまり統制です。)
養生法(自己修養)における調整法では、膨張と収縮というリズムとコーディネーションが十分に活躍できる環境設定をすることに過ぎません。むしろそれが出来ると言った方が前向きかもしれません。
このリズムが十分に機能されれば、身体全体でみたときの中心、各関節の中心は整いやすくなります。わかりやすく言えば、痛んでも寝れば治る世界です。
この膨張と収縮というリズムとコーディネーションは呼吸によって機能していると考えます。
呼吸の在り様こそが膨張と収縮という機能に深く関係してきます。
呼吸を整えるというと、自律神経的な、もしくは血行、また精神の安定とかそういう位置づけが一般的です。しかし、呼吸を整えるというのはそれだけではありません。
呼吸を整えるということは身体の膨張と収縮というリズムを整えることに等しく、私共が調整法の中に呼吸法を取り入れることの理由でもあります。
また、日々の在り方というのは呼吸のコントロールです。ちなみに呼吸を整えることは動きを整えることに等しく、両者は実践上、同じです。
いくら調整しても、無理な動きや過度の緊張、多忙な生活は、多くの場合で動きと呼吸の乱れを呼びます。呼吸の乱れによって膨張と収縮というリズムが崩れることになり、コーディネーションにも影響を与えます。(但し、呼吸のコントロール(統制)によって多忙や生活やタフな仕事を量的にこなす力を増すことはできます。)
膨張と収縮のリズムとコーディネーションを整える(調整)だけでは不十分で、日々の在り方(動きの統制)を整えることの重要性はここにあります。
こう考えると、呼吸が生命の流れそのものであるということが容易にイメージできます。
[形体や可動域は本人が決めること]
身体調整の目的は、形体や可動域を治療する側で決定するのではなく、あくまで膨張と収縮のリズム・コーディネーションを改善させるというものです。
そして、膨張が悪いとか、収縮が良いとかではなく、膨張と収縮が出来る身体にする、ということが大事です。
そうすると、形体や可動域は、その人なりの調和されたポジションに落ち着きます。
そして、最もその人らしいポジションは、最後は本人にしかわかりません。だから私は最終的な、ホントの最後のところの姿勢を指導することはありません。
私の姿勢の位置付けは、膨張と収縮のリズム・コーディネーションを阻害しないためのコツや注意であり、一つの型にはめることはしません。
ここまで述べたような事を一人ひとりがやっていただくと、本当の意味で治療技術が活きるような気がします。
言葉にすると厄介ですが、実践はそんなに難しいものではありません。
その実践の考え方は次回に。