第2~3回のコラムの続編、一応の最終回です。
今回は、実践的に考えていきます。
点・線・全体という概念と、膨張と収縮の働きを回復させ、阻害しないという取組みは様々な事の基礎にあるという事を書きます。
それではよろしくお願いいたします。
[膨張と収縮を臨床的に考える]
頭頚を含む体幹が膨張と収縮のリズムの根幹、根幹というのは呼吸の干渉率が高いところ、つまり鼻腔から咽頭、胸部と腹部、骨盤までがそれに当たります。
膨張と収縮のリズムを四肢まで働きかけてあげること。つまり、上肢•下肢。根幹と四肢をつなぐ重要なハブとなるのが肩と股関節。
肩とは実際には、頚、肩関節、鎖骨、肩甲骨、上腕骨の一部も含まれます。そして、股関節とは鼠蹊部・下腹部・股関節・臀部も含まれます。それらの周辺は血流・リンパの観点から要となるところ、また頚と腹は頭蓋~仙骨のリズムに深い影響を及ぼすことからも重要な要所であるとイメージできます。
また動きにおいても、体幹の動きは肩と股関節を通して、相互に連動し合っています。
循環においても、筋骨格系の動きにおいても、極めて重要なポイントであることは言うまでもありません。必然的に要所ということになる訳です。
膨張と収縮というリズムとコーディネーションを回復させる考え方として、
点•線•全体という概念があり、
点の調整とは、つなぎのハブである肩と股関節を開けるということ。
線の調整とは、上肢-体幹と、下肢-体幹の連動回復、つまり四肢と体幹をつなぐこと、コーディネーションの回復。
そして、全体としては上肢-体幹-下肢のコーディネーション(連動)回復、全身をつなぐこと。
これらの作業をすると、身体に中心を見つけやすくなります。中心とは、形体的な真ん中ではありません。その人が最も機能的で調和された状態です。
さらには中心から広がる膨張と収縮のエネルギー循環を阻害しないようにする方法(統制法)を身につければ、この状態が、身体にとって十分な自然治癒力が働く環境となります。 後は基本的には、ほうっておいても治癒の方向に身体が向かいます。
ちなみに私共が提唱する養生法(自己修養)には調整法と統制法あるというのは第1回コラムにも書きました。実践では、最初は調整法メイン、少しずつ統制法に以降していきます。(統制法は何かをするというよりも、その人が既に日常でやっている動きの質を変えることですので、新たにそのための時間をつくるものではありません。)
統制が取れてくると、調整法の必要性が低下してきますので、ケアにかける回数や時間は大幅に短縮されます。よほど趣味である場合や超ハードな生活をしている方でない限りは、死ぬまでずっと調整法を毎日やり続けるということは現実的ではありません。
養生法の目的は、調整法をしなくても大丈夫な身体をつくることにあります。
私共が提唱する養生法には基本となる呼吸動作は約30種、プログラム分けすれば5~6種類です。初めは全て体験していただきますが、その人の必要性に応じて順次減らしていくものです。
確かに何かを自分でやるのは大変かもしれませんが、こういう事を確実に積み重ねていくことによって、いつの間にか治療を受けることしかしていない方とは、色々な面で圧倒的な差がつくことは少なくありません。
養生法には治療を受けるだけという行為よりも多くの「学び」があります。
[呼吸は全ての基礎]
ここまで膨張と収縮という概念を3回のコラムでお話してきました。
身体各部の考え方や手法をあげればきりがありません、しかしそれはこの基礎の上に考えた方が無理がありません。
呼吸を整えるということは、
筋肉•神経を整える、関節を整える、自律神経を整える、内臓を整える、姿勢などの形体を整える、動きを整える、
つまり、身体を整える、
ということの大切な根幹になるのです。
根幹です。
根幹を強くすれば、枝葉論に惑わされることは少なくなります。
3回にわたり読んでいただき、ありがとうございました。
[後記]
最後に余談です。(余談なので適当に流してください)
自然とは、文字通り自然です。
何かを意識的に行うことや何かをするという時点で、それは自然と呼ぶことには多少の違和感があります。
ということを前提とすると、自然体とは、何かをするという事を前提には成り立ちません。
そもそも自然治癒力という言い方は、いかにも人間的です。
人間は自身に都合の悪い出来事を悪と捉え、都合のよいことを良と捉えます。
自然治癒力というのは、そういった前提の基に成り立っている極めて人間的な言葉であります。
本来は良いとか、悪いとかではなく、自然の調和・調整作用が存在すると言った方が腑に落ちる方もいるかもしれません。
現代生活が不自然、自然の摂理に反するのであるならば、自然に戻るということが大切になります。
そして、自然体・自然治癒力は、つくるものではなく、引き出すものという表現は、やはりしっくりきます。